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第79回公演

闇に咲く花

 
作・井上ひさし 演出・平野礼子

(平成27年8月8日、劇団創立50周年記念パーティーでの演出の言葉より)

「闇に咲く花」公演に向けて

 

劇団山形では、50周年記念公演で劇団として初めて、井上ひさしさんの作品に挑戦します。

井上ひさしさんは、お分かりの方も多いですが、地元山形県出身の劇作家、放送作家です。

数ある井上ひさし作品の中でも、私たちが今回挑戦するのは、≪闇に咲く花≫です。

 

≪闇に咲く花≫は、昭和22年夏、東京・神田の愛敬稲荷神社が舞台。

神主と近所の戦争未亡人の女たちが玩具のお面を作りつつ、配給だけでは足らずヤミをしながら戦後の混沌とする中を生きている。

そんな折、3年前に死んだはずの神主の一人息子・健太郎が帰ってくる。捕虜として捕えられていた最中に記憶を無くして、連絡ができなかったのだ。

喜びに沸く愛敬稲荷神社。健太郎は帰る早々、野球の才能を活かしてプロ野球に入団し、周囲の人々の希望の星になる…はずだった、というあらすじです。

 

劇団が50周年を迎える戦後70年の今年、改めて「あの戦争はなんだったのだろうか」を観劇いただくみなさまと一緒に考えたい、と思いこの度、この作品に挑戦しました。

 

井上ひさしさんが生前に繰り返しおっしゃっていたことがあります。

『むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに』と。

 

今回挑む内容は、これまで劇団が公演してきた作品の中でも秀でてむずかしいテーマではありますが、公演当日に少しでもみなさまに“ゆかいな”内容としてお伝えできるよう、稽古に取り組んでいます。

 

ぜひ、20日、21日は劇場へ足をお運びください。

劇団山形一同、心よりお待ち申し上げます。

【キャスト】

 

牛木公麿

   >> 五十嵐康博

牛木健太郎

  >> 神保弘毅

稲垣善治

  >> 志鎌和典

遠藤繁子

  >> 中村昌子

田中藤子

  >> 伊藤祥子

中村勢子

  >> 堤 玲子

久松加代

  >> 安部信子

小山民子

  >> 髙橋 紫

子守少女

  >> 佐藤里紗

鈴木巡査

  >> 角川博道

吉田巡査

  >> 石山浩行

諏訪三郎

  >> 片山賢司

ギター弾きの加藤さん

  >> 池田 司

 五十年間ありがとう     

           代表 松井光義

 

 今私は一枚の写真を手にしています。舞台写真です。六畳一間、下手に窓枠、その下に座り机。横にベニヤ作りの和ダンス。上手はこの家の入口。裸電球の下に座っている兄と妹。お客だろうか少し畏まった感じの若者がひとり。

 昭和四十二年第四回勤労者演劇祭に、中核メンバーとして参加した(県民会館小ホール)「ピカの陰から」の舞台である。劇団を結成してようやく活動が軌道にのりはじめた頃。

 もう半世紀前ーー写真もセピア色で懐かしい。

 若い団員たちの手で先日完成した劇団五十年史。ページをめくると、これまで上演した七八作品が写真入りで列記されている。作品を少し乱暴に大別すると、戦争もの、社会問題もの、教育もの、昔話もの、それに、創作となろうか。

 それを時代順にあげると「火山島」「ピカの陰から」「象の死」「椰子の実の歌がきこえる」「風薫る日に」等が戦争もの。

 劇団山形は、社会問題をテーマにした舞台が圧倒的に多い。当初からリアリズム演劇を標榜してきた理由でもある。「白衣の告発」「若者たち」「北方の記録」「吹雪」「息子があぶない」「法王庁の避妊法」「峠」「パートタイマー・秋子」「こんにちは、母さん」「あした天気になあれ」「蠅取り紙」「銀色の狂騒曲」「くちづけ」「日暮町風土記」近年では「をんな善哉」。

 教育をテーマにしたものは「かげの砦」「もうひとつの教室」「正太くんの青空」等。

 昔話では「鬼と雪んべ」「赤い陣羽織」「人を喰った話」。

 そして創作「北山形駅前西口学寮物語」である。

 ここにあげた作品の中に、あるいは皆さんの記憶に残っておられるものもあると思います。舞台はその場で消えていくいのちですが、〝なぜかあの作品は、今でもふっと蘇ることがあるんですよ”などと言っていただいた時、この先も舞台づくりを続けていく私たちにとって、大きな励ましとなるものです。

 五十年の永きにわたって、わたしたちの舞台を見守っていただいた皆様方、これから劇団を引き継いでいく若き団員たちの為に何卒これまで以上のお力添えを賜りたく、お願い申し上げます。

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 『闇に咲く花』をつくるにあたって  

           演出 平野礼子

        

 この作品の テーマは重く、描かれる思想は深いものです。

 ここで、作者 井上ひさし氏の、あの言葉を思い出しましょう。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、・・・・・・」

では、むずかしくてふかい部分を・・・・・・

「あの戦争を皆で思い出す」それが、この作品の主題です。昭和22年、戦後間もなくの神社が舞台。「兵士を死地に送った神社」から「平和の太鼓を鳴らす神社へ」という価値観の驚くべき転換。自己批判も反省もなく、価値観の転換だけをしてきた日本人を代表するのが神主の公麿。そして、その姿はそのまま、すべての愛すべき普通市井の民、そう![私たち]の姿だったことを忘れてはならない。

 生き残った[私たち]がなすべきことをこの作品は問う。自分の頭で考え、自分の意志で選択することは難しい。権力と戦うリスクもあれば責任も伴う。何も考えずに権力の振る旗の方へ進んでいけば楽だし、責任は[国家]に委ねることができる。しかし、その結果、耳触りのいいスローガンと権力の大きな声とに押されて、あの戦争へなだれ込んだことを、我々は顧みなければならない。権力におもねることなく、ちゃんと自分の頭で考え、正しい判断をすること。真面目に大切に生きて、次の世代にまともな社会を残していくこと。それが[私たち]のなすべきことなのだと思う。そしてその為に、過去の失敗に学び、反省をしなければならない。あれら過去の過ちは誰かの過ちではない。何も考えず、立ち向かう勇気を持たなかったかつての正直で善良な[私たち]全員の罪だからだ。

 劇中「記憶を取り戻すってあんなに辛いものなのかしらね」という台詞が出てくる。確かに過去の失敗を認めるのはきついし、償うのには時間がかかる。でも、いまの[私たち]がちゃんと過去の記憶を取り戻して、あしたの[私たち]に引き継いでいかなかったら、[私たち]はまた失敗を繰り返すのではないだろうか。

 ここで、井上作品を多数手掛けている栗山民也氏の言葉を・・・「私に戦争体験はありません。だからこそ、私は人間が犯してきた過去の戦争の悲惨さを、物語として現代に再生し検証していくことが、演劇人として、人間としての責任だと思っています。そして何度も歴史を見つめ直すことは、これからの世代へ戦争の記憶をしっかりと受け継いでいくことだと考えています。」「この『闇に咲く花』は記憶をテーマにした井上さんの剛速球です。」

 よい今日を明日につなぐために、昨日の失敗を思い出し、記憶し直しましょう。

【スタッフ】

 

演出・・・        平野礼子

舞台監督・・・    平野礼子

制作・・・      志鎌和典

安部信子

伊藤祥子

松井光義

伊藤尚彦

舞台装置・・・    澁谷常義

古林嘉弘

角川博道

片山賢司

神保弘毅

作曲効果・・・    池田 司

音響効果・・・    後藤和貴

小道具・・・    五十嵐康博

神保弘毅

髙橋 紫

照明・・・      武田正気

衣装・・・      中村昌子

堤 玲子

協力・・・     湯殿山神社

いちろう舞台

岡田 恵

阿部満(カフェドりぶる)

増藤和江

菅野恵美子

安部孝子

​金谷礼子

79show

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